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パネルディスカッション

 

 

気候変動と産業的農業の関係

 

司会:

私たちは、気候変動の緩和を助け、農業その他の全ての問題を回復させ、環境へのダメージを軽減する手段として環境保全型農業を提案しています。しかしながら、いまだ多くの人々は、産業的農業と気候変動の関係を認識していないのではないでしょうか。日本を例に挙げますと、私たちは火山の噴火や地震、津波を経験してきました。これらの災害は、まさに気候変動が引き起こしたといえます。あらゆる災害の軽減に本気で取り組むため、私たちはどう理解するべきか、もう少し詳しく述べていただけますでしょうか。

 

ヘレン博士:

産業的農業は多くの資源を必要とします。産業的農業に不可欠な、化学肥料、農薬、殺虫剤、除草剤は全て石油や化石燃料から作られ、結果的には大量の二酸化炭素を空気中に放出します。これらの大量投入が気候変動につながっているのです。

それに対し、環境保全型農業は空気中の二酸化炭素を土壌に取り込み、土壌中の有機物質を増大させます。これが気候変動の緩和に貢献することになります。

産業的農業のもう一つの問題点として、単一栽培が非常に多いことが挙げられます。これでは多様性が減少し、干ばつや洪水などの災害が起こった際、自然の耐久性や回復力はほぼ失われます。例えば大雨の際、土壌が水を吸収できず表面に流れ出し、土壌浸食を起こします。

これらの事態を引き起こす原因を考えると、これまでの産業的農業から、自然と調和した農業へ移行しなければならないのは明らかです。環境に配慮した農業は、伝統的な農業でもあり、これに従事する農家の人々は作物の生産現場で何が起こっているのかを認識しています。すなわち、環境の変化にも敏感に対応できます。しかし、産業的農業は、圃場やその周囲の状況を確認する人間すらいないのです。環境保全型農業を実践する農家は、圃場と自然環境の調和をもたらす真の担い手なのです。

 

 

消費者には何ができるか?

 

司会:

先ほどお二人とも、消費者の意識やニーズが、生産者の農業生産スタイルを変えていくのではないかとおっしゃいました。特に東京のような都市部に住む私たち消費者は、日々の生活の中で何ができるのでしょうか?環境により配慮し、貢献していくためには、どんな転換が必要でしょうか?

 

シヴァ博士:

まず言いたいことは、人は誰もが皆、食べなければならないということです。そして、口にするものはどこかの誰かが育てたものです。もし、あなたが食べ物を必要としているならば、それは地球と自然の摂理に従って正しい方法で育てられた食べ物であるべきで、それのみが食べるにふさわしいのです。パネルディスカッションそれには、あなた方自身が、食のシステムをより向上させるために貢献する一員となるべきです。都市の周囲を農家で囲む円を描き、都市部に供給できるだけの農作物が都市近郊で生産されるのが理想です。

私たち一人ひとりは地球に、農家にそして自分自身に対し、農薬・化学肥料を使用して作られた作物や遺伝子組み換え作物は絶対に口にしないと誓う必要があります。そうしないと安全で質の良い食べ物は手に入らないのです。

ヘレン博士の生物多様性の損失に関するスライドで、大豆の多様性が失われたグラフを見たとき、本当に心が痛みました。大豆はアジア原産の穀物であるにもかかわらず、日本をはじめ、アジアの国々では大豆の供給をブラジルやアメリカ、アルゼンチンからの遺伝子組み換え大豆の輸入に頼っているのが現実です。

モンサント社は今、世界中で大豆の品種に特許を取得しようとしています。種子を取り戻すため、アジアの一員として努力すべきことは、大豆の多様性を守るシードバンクを作ること、そしてアジアの大豆需要を全て有機栽培で賄うようにすることです。

全ての東京都民が「自分の健康を真っ先に手に入れたい。同時に地球の健康も手に入れたい」と声を上げることにより、地球にふさわしく、かつ私たちのニーズにもふさわしい価値ある食料供給を促進できるのではないでしょうか。

 

ヘレン博士:

もし消費者が、値段が高いことを理由に環境保全型農業で作られた作物を購入しないなら、農家は栄養素の高い作物を生産しないでしょう。世の中には安い食品があふれています。しかし、実際にはこれらの安い食品には、見えないコストが多く含まれています。

それらの見えないコストを私たちは知らないうちに払わされています。例として、水が汚染したら政府は水をきれいにするために税金を投入します。環境が汚染されたら、元通りにするために誰が多額のお金を支払うのでしょうか?最終的には税金を通して、あなた方全員が支払うことになるのです。

消費者が価値に見合った価格の支払いをためらうと、農家は経済面で生活が成り立たず苦しみます。先日、日本の農家の平均年齢は65歳程度だと聞きました。10年後、20年後、この国ではいったい誰が作物を育てるのでしょうか?

明らかに現在の食のシステムはどこか間違っています。農家が適切な給料を得られないという現状は、消費者が農家に対して敬意を払っていないことを示しており、結果として、若い世代の農業離れを招きます。平均的な生活を送るためのお金すら稼げないとすれば、誰が農業をやりたいと思うでしょうか。

私たちは環境問題から、気候変動、生産者の高齢化、経済問題まで、全てがつながっていることに気付くはずです。どれも単独で解決できるものではなく、包括的対応が必要です。安全な食べ物、健康、良い環境そして安定した経済を手に入れるための問題を解決したいならば、これまでの考え方を転換させる必要があります。

 

 

自然と共存する生き方とは?

 

司会:

今のお話を聞いて、私たちの見えないところで掛かっているコストが、長い目で見たときに、健康への影響も大きいこともわかりました。そして、それ以上に私たち人間が存在するこの生態系への影響も非常に多大なものだということを感じます。先ほどのお話の中にも出てきましたが、日本は食料を輸入に頼っている国です。そんな生活パターンで暮らしている私たち日本人が、これからどういう方向に向かわなければならないのかということを、あらためて考える時なのではないかと思います。

その中でもヘレン博士は、未来に希望が持てるようなことをおっしゃっていました。今の状態を続けていたら、8億人の人口は食べさせることはできないけれども、環境保全型農業に変えれば、栄養素の高い食料を供給することができると。そのための最初のステップとして、私たちが自然からかけ離れた生活ではなく、もう少し自然と共存するような生き方や生活を送るべきではないかと思うのですが、その点についてお二人に聞いてみたいと思います。

 

ヘレン博士:

都市部と農村地域を再びつなげることがとても重要だと思います。地球が私たちにもたらしてくれているものは何でしょうか?実際のところ、人々はどんどん加工食品を選択しています。機械の上で同じように作られているただの「ジャンクフード」です。でも人々はそれを便利で時間の短縮になると思っ

ています。

しかし、人生において、食事の準備の時間を削ってまでする大切なことは何なのでしょうか?人々の行動を問いただしてみる必要があるのではないでしょうか。

 

シヴァ博士:

皮肉なのは、自然に依存していないと思う人であればあるほど、実際は自然により依存しているということになります。なぜなら自然から離れてしまった分だけ、環境フットプリントは、増大するからです。環境フットプリントとは、人間がどれほど自然環境に依存しているかを表す指標であり、自然資源の消費量を土地面積で表したものです。ですから、最初の一歩として、私たちは自然の一部なのだと認識することです。私たちは自然とつながっているのですから、自然を傷つけるということは、同時に私たち自身も傷つけられるわけです。殺虫剤をまけば、自分たちが癌になるでしょう。ラウンドアップ(除草剤)をまくことで、土壌は死に、そして私たちの腸内にいる微生物も死に絶えます。たくさんの有益な生命体が失われていくのです。私たちが認識しているよりも多くの微生物が腸の中に生きているのです。私たちの腸の中は多様性の宝庫であり、全生態系の縮図なのです。

ここで私たちがなぜ自然を尊重し、意識を高めなければいけないか、その理由を3つ述べたいと思います。まず、私たちは自然の一部であり、これは逃れることのできない事実であるということです。次に、自然と共に働き、作業することで、より高い生産性を上げられるということです。そして、自然と調和することで、社会的調和も築けるのです。

 

 

遺伝子組み換え作物について

 

司会:

世間では遺伝子組み換え作物のみが、世界の人々に食料供給を行い、貧困から救うことが可能だといわれていますが、それついてどう思いますか?

 

シヴァ博士:

人類史上、10億の人々が常に飢餓に苦しむ例は、かつてありませんでした。そして、飢餓に苦しむ人の半数が実は農家です。なぜ食料を生産する側が飢餓状態に陥るのでしょうか?それは、産業的農業では以前の10倍以上のコストが掛かるからです。農家は農作物の収穫によって得た収入から、新たな種子や化学肥料を購入し、機械の借金返済をしなければなりません。農家は生産する側から化学肥料や機械

を消費する側に変わってしまったのです。

産業的農業が食糧生産に支障を来たすもう一つの理由は、単一栽培に基づいていることです。産業的農業には存在しない多様性こそが、より質の高い作物の生産をもたらしてくれるのです。

 

ヘレン博士:

遺伝子組み換え技術にいえることは、表面的な問題だけを捉えていることです。害虫の発生には殺虫機能を組み込む。つまり、症状に対処するだけのものであって、問題を根本から解決するものではないのです。例として、穀物の害虫問題は、農業経済の発展によって生じた問題なので、単なる症状に対処するというだけでなく、問題の根底にある農業経済の面から改善されなければなりません。遺伝子組み換え作物であるゴールデンライスは、栄養価を高めようと作られたものですが、表面的な症状を改善するだけの間違った方法です。失明の原因であるビタミンAの不足は食物の多様性の欠如からくるもので、根本的に解決するにはさまざまな食物を摂取することが必要なのです。

 

司会:

お二人とも言われたように、目に見える症状、現状のみに対応するのではなく、問題の根本を改善しなければ、ただの一時しのぎにすぎないのではないでしょうか。では、遺伝子組み換え作物を食べ続けると、私たちの健康にどのような影響を及ぼすのかについて、シヴァ博士に詳しく話していただければと思います。

 

▲遺伝子組み換え技術で生まれた害虫抵抗性作物(左)と除草剤耐性作物(右)

 

シヴァ博士:

遺伝子組み換え作物は大きく2つに分類されます。1つは害虫抵抗性作物で殺虫作用があるBT(土壌微生物バチルス・チューリンゲンシス)由来のタンパク質が植物に導入されて、各細胞が殺虫成分を生み出します。もう1つは、ラウンドアップへの耐性を中心とした除草剤耐性です。BTの場合、有害成分を生成するのはBTタンパク質によるものだけでなく、一緒に加えられている抗生物質耐性マーカー遺伝子とウイルス性のプロモーター遺伝子も影響しています。あらゆる遺伝子組み換え食品は、常にこの3つの遺伝子を含有しています。BTについては、体内で分解するといわれていますが、実際には、妊娠中の女性の血液や胎児から検出されています。毒物を生成する遺伝子と有毒なタンパク質が代々受け継がれていくのです。ブラジルで行われた調査で、このBTによる有害成分が赤血球を攻撃することが分かっています。抗生物質耐性マーカー遺伝子は、新たな遺伝子を注入しても、それが正しく吸収されたか分からないため、新たな遺伝子を吸収した細胞と吸収していない細胞とを区別するために組み込まれており、抗生物質を使用すると、遺伝子を吸収した細胞は、抗生物質への耐性があるので生き残り、遺伝子を吸収しなかった細胞は死滅します。これは、単に選別するためのものですが、私たちの体に抗生物質への耐性を持った遺伝子が入るため、抗生物質が効かず、人体の健康にとって大きな脅威となっているのです。3番目の遺伝子群は、遺伝子発現を促進する、超強力毒性のウイルスです。私たちの胃の中でウイルスと交雑して、スーパーウイルスを生成する恐れがあります。SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したとき、中国の科学者から、動物が食べた遺伝子組み換え大豆が、その動物の胃腸の中でウイルスと混ざり合い、スーパーウイルスになって人間に感染するようになったという報告を受けました。

もう一つの種類である除草剤耐性とは、ラウンドアップ(グリホサートが主成分)という除草剤への耐性のことです。グリホサートも、BTと同様に体内で分解されません。アメリカでは母乳からグリホサートが検出されており、おそらく日本でも検出されているのではないかと思います。このグリホサートは、ミネラルを閉じ込めるという性質を持っており、ミネラルを拘束してしまうのです。ミネラルは、脳を適切に機能させるのに必要な神経伝達物質を生成する酵素を作り出す一翼を担っているため、ミネラルが拘束されることによってさまざまな問題が出てきます。アメリカの疾病予防管理センターによると、子どもたちの間で自閉症が急速に増えている一番の理由がこのためで、アメリカではトウモロコシと大豆の95%が遺伝子組み換えとなり、全国民がこれを食べることを余儀なくされている状況下では、2050年までにアメリカ全土の子どもの半分が自閉症になると予測されています。

皆さんが、こうした事実をまったく知らない理由は2つあります。1つ目は、企業が安全を宣言し、それに対し政府は独自の評価を行っていないからです。2つ目は、中立的立場の科学者がこうした影響に対する調査を行うたびに、業界から横やりが入るからです。その例が、英国政府の委託を受けて調査を行い、ラットの脳や腸がダメージを受けることを証明したアーバッド・プースタイ博士や、臓器不全と悪性の腫瘍を証明したエリック・セラリーニ教授です。業界は、彼らの出版物が絶対に一般市民の手に渡らないよう対策を講じています。

 

司会:

先ほどヘレン博士が発表の中で、現代の産業的農業では、品種は激減し、窒素使用量は膨大に増えており、本来自然は、無くなったものを新たに生み出す力を持っているのに、その許容量をはるかに超えている状況だとおっしゃいました。そのことについてもう少し詳しくお聞きしたいと思います。

 

 

ヘレン博士:

ご承知のように、光合成とは、太陽の光と水、二酸化炭素を使って、デンプンと糖、タンパク質を作り出すことです。それが植物の成長する過程なのです。つまり、太陽の光をしっかりとらえるため、少ないエネルギー量で作物を生産することができるのです。しかし、先ほど述べました通り、詳細な調査を行った結果、現在のシステムでは1カロリーを生み出すのに10カロリーも要するということが分かりました。また冊子「ワールド・オーガニック・アグリカルチャー」では、有機農業において、そのエネルギー消費は真逆であることも分かっています。環境保全型農業システムでは、1カロリーを投入すれば、最低3カロリーを得ることができ、おそらく最高で30カロリーを生み出せるでしょう。それは自然が持つ能力をうまく利用しているからです。炭素を大量に含有する土壌があれば、肥料を足す必要はありません。窒素肥料を大量に投入すると、その大半が失われます。土壌から、空中、水中、海へと流れ出ていくの

です。慣行農法システムは窒素の漏出が多い。だからこそ、別のシステム、つまり環境保全型農業システムが必要なのです。このシステムは、バクテリアを通して、あるいは、有機物質の分解により、自ら窒素を生成する土壌の能力を維持することができます。

 

 

持続可能な環境保全型農業で

世界の必要とする食糧を生産できる

 

司会:

産業的農業というのは、化学肥料などを使うことによって必要以上の窒素が空気中に放出してしまう。それほどのことが分かっているにもかかわらず、移行が行われない現状です。もしかしたら、世間が有機農業や自然農法など環境に配慮した、持続可能な環境保全型農業に転換した場合、十分な収穫量が得られないのではないかと危惧している人が多いのではないかと思います。その点について、詳しくお話ししていただけませんか。

 

 

ヘレン博士:

自然農法や有機農法などの持続可能な農法では、世界が必要とする十分な食料を生産できないだろうという見方が付き物です。これは企業、特に肥料会社や種子・農薬会社が、自身の製品を使用する農業システムを、政府担当者に推進させるための単純な宣伝戦略にすぎません。つい先週も、有機農業や持続可能な農業が、従来のレベルに近い水準まで生産できることを示す出版物が新たに発表されました。環境に配慮した農法と慣行農法の収量の差に着目した場合、農作物だけでなく畜産による生産量もあるという事実に目を向ければ、その差はだいたい5%から8%低下する程度ではないでしょうか。これについても、業界の宣伝組織は、その差が25%、35%、場合によっては50%と言うでしょう。しかしそれは、

ただ持続可能な農業もほぼ同じぐらい生産できるという現実との大きな差を露呈するだけです。

近年、干ばつや洪水に頻繁に見舞われる中、アメリカでは有機農業の収量が、慣行農法の収量を上回ることがデータにより証明されています。それは、環境に配慮した農法の方が、耐久性があるからです。水が土壌に浸透し、降水量の少ない乾燥した天候では土中にとどまるなど、持続可能な農業や自然農法を採用すれば、まったく異なるシステムを手に入れることができます。

もう一つ忘れてはならないのは、大量浪費についてです。先ほどプレゼンテーションの中でも説明したように、現在世界では人類が本当に必要とする量の倍の生産量があります。それなのに、なぜこれ以上生産量を増やす必要があるのでしょうか?とりわけ先進国では食べ物があふれ、その半分が廃棄されています。私たちは、今目を覚まして、どこで多くの食べ物が必要とされているのかを考えなければならないのです。これを考えた場合、必要としているのは開発途上国であり、そこで持続可能な解決策を用いれば、先ほど紹介した事例のように、何も投入することなく、収量を2倍、3倍、4倍、場合によってはそれ以上に増やすことができます。

 

シヴァ博士:

私たちはまず、食物を生産しているはずの産業システムが、実際には、私たちの口にする食物を生産していないということを認識しなければなりません。そのシステムが生産しているのは消費される食べ物のわずか30%で、残りの70%を生産しているのは小規模農家です。産業システムが生産しているものは、栄養素が少なく、毒性の多い作物です。こうした商品の大部分は家畜の飼料やバイオ燃料に使われ、人間の食物にはなりません。食物の30%しか生産していないのに、土壌や水、生物多様性の75%、そして排出される温室効果ガスの40%を、この産業モデルが占めているのです。地球上で水が減れば、肥沃な土壌も減ります。生物多様性が低下すれば、気候がより不安定になり、食物も減ります。産業的農業が食料生産の根幹を破壊しつつあるのです。

過去20年間にわたるナヴダーニャの活動が明らかにしているように、多様性に富み、かつ環境保全型の小規模農業を行えば、1エーカー当たりの栄養生産量が増えます。それは、土壌の養分が増し、植物が摂取する養分が増えることで、私たちの身体が摂取する栄養も増えるからです。環境保全型農業であれば、私たちが必要とする量の倍の栄養を提供することができます。そして、全ての人のために、より身体に良い食べ物を生産するだけでなく、より肥沃な土壌を作り、水質も向上させることが可能です。生物多様性も向上させることができますし、そして何よりもまず、気候変動に対応することができます。単一栽培や化学物質を含んだ土壌では気候変動に対応できません。進化し、適応できる多様性、そして、ヘレン博士が先ほど述べたように、耐久性を持つことのできる炭素の豊富な土壌を持つことで対応できるのです。実際、皆さんが懸念すべきなのは、環境保全型農業への移行ではなく、私たちの食べ物が、5つの大企業が所有する4つの作物だけになること、そして、気候問題や政治的問題で麻痺する恐れのある長距離供給です。

 

 

私たちの食生活を変えることができるか?

 

司会:

お二人から、いかに私たちが栄養素のない食物に囲まれ、そして一握りの企業が私たちの食を支配しているということを聞き、本当に恐ろしいことだと思います。ただ、今日の会議を聞いて、今は感銘を受けていても、帰りには普段通りの食生活に戻ってしまうのではないかという気がします。どうしたら私たち日本人が、根本から食生活を変えることができるのでしょうか?

 

シヴァ博士:

1つ目は、日本人の食生活はとても健康に良いものであり、それを失ってはいけない、ということです。2つ目は、ヘレン博士が示した、大豆の多様性が失われたというデータを見て実感したのですが、日本の全ての家庭が、遺伝子組み換えでない大豆を栽培する農家と、それを自然な手法で加工する団体などを探す必要があるということです。本物の食べ物を自分たちのために栽培してくれる農家を支援していれば、もしくは、あなたが本物の作物を育てている農家であれば、それは、土壌と水、生物多様性を保護していることになります。そして気候も守り、あなた方に健康を与えてくれているのです。このように環境保全型農業を行う農家の人々は、かかりつけの医者と同じです。医者に多額のお金を払うことを厭わないのであれば、もう少し手厚く農家の人々を支援することで、日本の農業が今後も本物の食べ物を供給し続け、そして次世代の農家の人々も、この美しい国土と美しい文化を大切にし続けることができるという事実について、ぜひ考えてみてください。

 

ヘレン博士:

食の問題に対する解決は、消費者の手に委ねられていると強く感じます。自分が何を買い、何を食べているのか、また、なぜ買うのか、その食べ物の価値にふさわしい金額を払おうしているのか、商品パッケージの中身の正体は何なのか、という疑問を持って知識を得ようとする意識を高めるため、消費者への教育や情報提供を充実させなければなりません。少し値段が高くても、自然に即して生産された食べ物を買う方が、実は安上がりになるということを知る必要があります。自然に即して作られた作物は、慣行農法で作られた作物より水分が20%少なく、栄養価も高く、その上長持ちします。正しい選択をすれば、経済的にも得なのです。

忘れてはならない点がもう一つあります。農村を中心とした昔の社会の在り方とは異なり、都市化が進んだ社会に暮らしている私たちは、現在の生産と消費のシステムを見直す必要があると思います。このシステムという視点で、食の問題に本気で取り組まなければ、解決を見いだすことはできないでしょう。

一つの例として、農業生産者が消費者と直接触れ合う場所、つまりファーマーズマーケットを増やす必要があります。農業生産者や農業組合が、スーパーと同じように、日常的に市場にアクセスできる態勢を整えることが求められます。そして、持続可能な農業を広める重要性を考えるだけでなく、食の全体的な仕組みについて考える必要があるのです。この仕組みについて考えるところから、消費者と生産者の両方にとって役立つ新たな解決策を見いだし、うまく循環させていくことができるはずです。

この問題について最後にお話ししたいことは、消費者が、自然に即した持続可能な方法で生産された農作物や加工食品を高いと考えていることです。確かに、ニンジン100グラム当たりの価格は高いかもしれません。でもその分、水分が少なく、栄養価は高いです。そしてもう一つ重要なことは、食品廃棄物を減らすことです。先ほどスクリーンで統計をお見せしましたが、買い過ぎて食べ切れないため、平均でアメリカでは50%、イギリスでは40%、そして日本では30%の食料が廃棄されています。そろそろ食べ物の無駄を無くし、少し高いお金を出してでも質の高い食料を選ぼうではありませんか。

 

司会:

私たちは今、食物の価値観を考え直さなければならないのかもしれません。粗悪な食べ物は、生産過程で空気や水を汚し公害を発生させ環境を汚染します。そして払った金額の倍以上の額が「税金」という形で私たち自身に返ってくるのです。安さを重視するよりも、栄養価の高く、環境にとっても良い食べ物を選ぶべきだと思います。そして、消費者が鍵であるとヘレン博士が言われました。食物はスーパーでしか買えないと思いがちですが、CSA(地域支援型農業)のように消費者が生産者をサポートするような仕組みを利用したり、この会議と並行して開催しているオーガニックマーケット「のたねフェス」のような場所に率先して行ったりして、広がることによって多くの人が農家から直接農産物を買える機会が増えるのではないでしょうか。若い世代や女性も含め私たち一般の消費者には何ができるのか、お二人から力強いメッセージを頂きたいと思います。

 

 

ヘレン博士:

私が提案したいのは、消費者である家庭の夫と妻の両方が、普段の食事の支度を習慣にすることです。つまり、家族全員が料理に興味を持つようにすることです。車でファストフード店に立ち寄り、簡単に食事を済ませるような利便性や経済面を重視した生活により、私たちは数多くの大切なものを失ってきたと感じます。食事は文化です。本来の食文化を取り戻す一つの方法は、農業生産者と手を組む消費者グループをどんどん作っていくことであると思います。

消費者が経済的なリスクを負う、または、農業者とリスクを分担するCSAを皆さんご存じだと思います。消費者が決められた金額を支払う代わりに、農産物を受け取る契約を結びます。豊作ならばたくさん受け取ることができますが、凶作のときは少ししか受け取れません。消費者が生産過程のリスクを分担し、消費と生産のシステムを担うのです。皆さんお分かりだと思いますが、私たちの未来のために、どのような道を歩むべきか、友人や家族など身近な人と話しましょう。

 

 

シヴァ博士:

現在の非常にゆがんだ食料経済(食料の生産・流通・消費に関わる経済的側面)は、これまでのゆがんだ経済モデルがもたらした結果です。この経済モデルは、社会の重要な担い手である女性たちを片隅に押し込めてしまうモデルです。

そして将来、若者たちの居場所が無くなってしまうモデルです。その結果、次の若い世代は、経済に対する権利を失うことになります。この仕組みの中では、資本が絶対で支配的な立場にあり、人間は単なる労働力、自然は単なる資源として投入する材料にすぎないと信じ込まされています。私たちは意識を転換させ、自然と人間が調和し合い、健康的な食料を創り出す重要な担い手であることを認識しなければなりません。

多くの若者が世界中で失業の問題に直面するこの時代にこそ、若者がリーダーシップを発揮し、地球と人間、そして未来のために、新しい観点で食料経済を創り上げてほしいのです。私たちは、生産過程で投入される資材ではなく、経済活動の成果です。私たちの幸福、健康、地域社会における連帯そして団結は、健全な食料経済の結果なのです。主婦の方々は、「oikos」(ギリシャ語で「家」)の本来の意味に立ち返るとするならば、食べ物と経済、幸福、愛そして思いやりの「エキスパート」なのです。病に倒れ、悲惨で不幸になるのではなく、健康で幸せな真の豊かさを実現できるよう、家族や社会の全ての人々が気遣い、互いに分け与える文化を広める必要があります。

経済の持つ力がいかに破壊的であるかを目の当たりにすると、将来を悲観的に捉えてしまうこともあるでしょう。しかし、私たちはそれをより良い世界を創造する力に変えることができるのです。そして私たち一人ひとりがその役割を担うのです。この世の中に人を使い捨てるようなことがあってはならず、また必要のない人間など誰一人おりません。誰もが世界の中心にいる主役で、その世界を形作ることが私たちの手に委ねられているのです。食物は、単に消費される商品ではありません。生命の網(ウェブ・オブ・ライフ)、つまり全ての生命はつながっているのです。その生命の網の中には、農業生産者、土壌、花粉を運ぶ昆虫、太陽、そして私たちの祖先から受け継がれた知恵など全てが宿り、それは未来への贈り物なのです。

若者こそ未来であり、そして未来は若い皆さん方の手にかかっています。一人ひとりがこの素晴らしい地球、大自然の家族の一員であるという意識を持って行動することが、未来を耕しつくっていくのです。

 

▲ナヴダーニャ農場の小麦畑

 

司会:

ヘレン博士、そしてシヴァ博士、ありがとうございました。今日は素晴らしいお話を聞かせていただきました。

この資本主義の食の在り方を、もう一度見つめ直す必要があることを痛切に感じています。ヘレン博士も言われたように、まず家庭の中から始めるべきではないでしょうか。今、家庭では家族そろって食事をすることが減っていると聞きます。私たち一人ひとりが食を見つめ直し、体に良く栄養素の高い食べ物に意識を向けることが大切です。シヴァ博士が言われたように、一口一口が生命を育むか、破壊するかの投票であり、私たちには選択する権利があるのです。私たちが食のシステムを変えていく力を持っていて、そのきっかけになれるのです。今日は「私たち一人ひとりが種」だとお聞きしました。その種として素晴らしく成長していかなければならないと思います。決して遺伝子組み換えのような種にはなりたくありません。私たちが何を選択し何を食べるかが未来を決めるのではないでしょうか。今日から、食の選択を変え、着る服を天然素材のものに変えていくなど、少しずつでも変えていくこと、シフトしていくことが、希望あふれる未来への第一歩になると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SEED FREEDOM
Protecting the purity, integrity and diversity of natural seeds.